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2000年03月23日

#10 魔法の終わり

魔法の鍵を失くした僕は、少しゲーセンから遠ざかるようになった。またカメを出し抜けば鍵を手に入れるのは簡単だったが、そんな気分にもなれない。僕がヤクザにやられた話はいろいろな尾ひれがつき、いつの間にか武勇伝のようになってゲーセンの連中に広まっていった。実際のところは情けないの一語に尽きたのだが、いちいち説明するのも面倒くさかった。中学の後輩の中には僕を恐れるものもいた。全て自分とは無関係の世界の話のように思えて、うっとうしかった。

高校受験が始まった。僕が受けようと思っていたのはエスカレーター式で大学まであがれる都内の私立校だった。進路指導では「危ないな。すべり止めをちゃんと受けておけ」と言われた。僕はこの期に及んでもまだゲームのことばかり考えていて、教師の話などロクにきいていなかった。合格発表の日、教師の、まさか受かるとは……、という感じの驚愕の表情が僕へのお祝いになった。学校中が「なぜあいつが」という顔をしていた。僕は少しだけ鬱憤が晴れて、つまらなかった中学とおさらばできることを素直に喜んだ。

その年の春休み、正確には中学を卒業し高校に入学するまでの間に、僕は『ロードランナー』というゲームの大会で全国優勝を果たし、生まれて初めて日本一というものを経験した。月刊少年ジャンプが主催したゲーム大会で、賞品は30万円相当のパソコンだった。僕は従兄弟に賞品をあっさりくれてやった。この年にはもうひとつ、ゲーマーにとっての大きな事件があった。新風営法の施行だ。ゲーセンは深夜0時で閉店しなければいけなくなり、街のゲーセンはすっかり様変わりした。朝まで時間をつぶす場所はなくなり、荒れたガキどもは一時期ゲーセンから姿を消した。照明は明るくなり「不良のたまり場」という雰囲気を一掃するため、業界は力を尽くした。僕は思った……僕の愛したゲーセンは今日で終わりなんだと。確かにひとつの時代が終わったのだ。

昭和60年、1985年、阪神タイガースが優勝した年の話だ。

つづく……



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