
初めて熱帯魚を飼った人や、飼ったことがない人にありがちな間違いに「水槽は泡をぶくぶくさせるのがよろしい」というものがある。大抵の初心者は盛大に泡をぶくぶくさせて、「よしっ、これで酸素の供給はオッケー♪」とか思うらしいのだが、実際にはこれはほとんどの場合必要ない。むしろ、そういった泡を嫌ったり、泡を発生させることによって生じてしまう強い水流を嫌う魚もいるのだ。また、夏場などでよっぽど水温が上昇してしまったり、極端に水が汚れてしまわない限り、水中の酸素が足らなくなるなどということはない。水を全く循環させない金魚鉢などではこの限りではないが。
植物は二酸化炭素を吸収して光合成を行い、酸素を吐き出している。特に水草を専門にやっている人にとってはこの泡ぶくぶくは最も縁遠いものである。泡をぶくぶくさせると水中の二酸化炭素が減少し、酸素ばっかりになってしまうため、水草の生育が思うようにいかないからである。少しマニアになってくると、水草水槽には必ず二酸化炭素添加装置をつけている。ボンベから目に見えないくらい小さく気泡化したCo2を水中に送り出し、不足しがちな分を補うのである。これをやると水草の成長に格段の差が出る。
水草の光合成を実感できるのは水替えの時である。人によって違うが、大抵水槽の水は1週間から2週間に一回、全水量の1/3程度を目安に水替えを行う(水草水槽の場合はもっと頻繁に大量にやる人もいる)。このとき水道水を直接使用すると(塩素は当然抜くのだが)、水槽内の水草が一斉に酸素を吐き出すのである。水道水には大量の二酸化炭素が含まれているのである。葉の先に酸素の気泡をためている姿はとても綺麗で幻想的な光景だ。
しかしこの二酸化炭素添加装置の扱いには充分注意しなくてはならない。ボンベのバルブが緩んでいると、Co2が大量に放出され、今度は酸素不足で魚の命が危険にさらされるのだ。僕が熱帯魚飼育をやめてしまったのはこの事故が原因である。きっちりと調整したと思っていたバルブが緩んでいて、Co2のぶくぶく状態になってしまっていたのだ。気付いたときにはもう手遅れで、愛情を注いで育てていた魚たちは皆白い腹を水面に浮かべていた……。
金の話をするのもえげつないが金額的にもまた同じ魚を手に入れるのは不可能なくらい高価であったし、そもそもめったに入荷しない(1〜2年に1度とか)珍しい魚がたくさんいたのだった。それよりもやはり、自分で繁殖させて手塩にかけて育てた子供たちが死んでしまったのが何より悲しかった。
というわけで、僕の家には水すら入っていない空っぽの水槽が寂しく置かれているのである。
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