
上り坂、10度程度の勾配にさしかかった。路面はうっすらと白くなっているが、積もりそうになっては溶けるという感じだ。タイヤから感じる雪の質感はシャーベット状。「うっ この坂登れるのか……」と思ったところで案の定タイヤが空転した。坂の途中で全く前に進まなくなり、その場で右を向いたり左を向いたりのお尻フリフリ状態になった。幸い僕の車は最後尾だったために事故にはならなかったが、車の往来が激しい状態で前を走っていたらどうなっていたか知れたものではない。
先を行く2台が僕の立ち往生に気付き、車を止めた。僕もあきらめてアクセルをもどす。ずるっと坂をすべり落ちそうになったが、なんとか坂の一番下まではずり落ちずに止まった。ギアをニュートラルに入れて、惰性によるバックで慎重に車を路肩に寄せる。
「おいこれ動けないぞ」
「どうするよ……」
「チェーンないし……」
4WDを使って最寄のガソリンスタンドでチェーンを買って来ることにした。FF車はまだ走れるのだが、これも用意していたチェーンを念の為履くことにした。寒い車中で女の子の視線が痛い。「なんでチェーンとか用意してないわけ? 信じらんない」という無言の圧力が込められた視線だ。数十分後、思いのほか遠かったガソリンスタンドから4WDが帰ってきた。
「あーおまえの車種に合うチェーンはないらしいぞ」
「ぐはっ」
僕が乗っていたのは排気量がでかく、タイヤが扁平な外車だった。フェンダーとタイヤの距離がとても狭く、チェーンを装着するとフェンダーがボロボロになるという。ガソリンスタンドはあくまで緊急用のチェーンしか用意していず、そういう特殊な車が履けるようなゴム製のチェーン(?)は置いていないのだった。万事休すだ。
仕方なくFR車をその場に乗り捨て、翌日取りに来ることにして2台で宿に向かうことになった。4WDとFF車でぎゅうぎゅうづめのドライブだ。人一倍体のでかい僕は、窮屈そうに体を縮めてしかめっつらをしている女性に囲まれて、生きた心地がしなかった。なんとか宿にはついたのだが、食事の支度やら、洗い物、寝床の支度などは全て僕の仕事になったのは言うまでもない。ちなみに寝る前に男連中で麻雀をやったのだが、これがバカヅキで昼間の不幸を取り返すかのように相当な大金が僕の懐に転がり込んできた。男連中の怒りようは頂点に達していただろう。
「つーかさー、明日になったって道路が雪に覆われてたら結局あの車うごかないじゃん? どうすんのよ。悪いけど俺らおまえ置いて先帰らせてもらうよ?」
「ひぃぃぃいい」
幸い翌日は抜けるような快晴となり、直射日光が当たるところでは道路の雪もほとんど溶けていた。雪が残っていたところも除雪車があらかたどけてくれていたので、なんとか僕の車でも走れそうだ。しかし悲劇はこれだけでは終わらなかった。
エンジンがかからない! というかバッテリーがあがってる! 4WD車からケーブルを引いてみたのだがそれでも動かない! 僕の車の大容量バッテリーはうんともすんとも言わないのだった……。再び4WD車でガソリンスタンドに行くがここでもまた「そんなでかいバッテリーうちには置いてないよ」と一蹴される。もう全員呆れかえって口をきく気力すら失っているようだ。
結局その後、最寄の自動車整備工場まで(20Km以上あった)4WD車で行き、でかいバッテリー(確か4万円だった 笑)を買い、全員の鋭い眼光を浴びつづけながら家路についたのだった。
教訓 冬は家にいろ
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