
熱帯魚を飼うということは、一体何なのだろうか。一時期熱帯魚飼育にハマりまくった自分自身よくわからない。それはやはり、単なる「野生の私物化というエゴイズム」なのだろうか。
熱帯魚の多くは飼うのが非常に難しい。遠い異国からの輸送で何割かが死に、やっとたどり着いた熱帯魚店のずさんな管理で何割かが死ぬ。運良く誰かに買われていっても、その人が熱帯魚初心者であれば1ヶ月ともたずに死ぬ。長期飼育に長けたマニアに買われたとしても、悪く言えば「長い時間をかけて殺されている」も同然なのだ。野生は野生のまま、生まれた場所で生きるに越したことはないはずだ。
と嘆いていてもはじまらない。毎日大量に輸入されてくる熱帯魚は、自分が買わなくても誰かに買われて殺されるか、あるいは熱帯魚店で殺されるかのどちらかなのだから。せめて自分の元にやってきた異国の魚を、少しでも長く生かしてやりたいと思うのが熱帯魚マニアである。僕はこのエゴイズムのせめてもの罪滅ぼしとして、「繁殖」に力をいれていた。ただ水槽の中で暮らし死んでいくだけではかわいそうだ。生きた証を残させてやりたい。そういう思いで熱帯魚飼育に取り組んでいたのだが、気付けば自宅には10数本の水槽が並んでいた。繁殖にはたくさんの水槽が必要なのである。
僕の専門はシクリッドと呼ばれる種類で、その中でも大きさが3〜4cmくらいのアピストグラマという南米産の魚をたくさん飼育していた。アピストグラマの中にもまたいろいろな種類があり、色が鮮やかなものもいれば、全く派手さのない地味なものもいる。比較的繁殖は簡単と言われているが、それは他の種類に比べてであって、実際は恐ろしく手間がかかり大変な労力を必要とする。水質管理、温度管理、給餌管理など、どれかひとつに落ち度があっても繁殖は成功しないのだ。知識と経験、魚に対する愛情がものをいう。
もうひとつ頑張っていたのは水草の育成だ。こちらも結構難しいのだが、美しく繁茂させたときの喜びは魚の繁殖と同じか、それ以上のものがある。園芸で有名なオランダでは、「ダッチアクアリウム」といって、水草だけの水槽が盛んだ。たくさんの種類の水草を水槽一面に配置して、花壇のように仕上げるのである。この美しさはとても言葉では言い表せない。是非一度熱帯魚店に足を運んで間近で見てもらいたい。
で、昨日の続きなのだが、僕はあの金を全て熱帯魚につぎ込んだのだった。内訳は、重量500kgの荷重に耐えられるスチール製の水槽ラック、曲面仕上げが素晴らしい75cm水槽、ドイツ製の高性能フィルター「エーハイム」、補助のスポンジフィルター、底面吹き上げ式のオーバーフローシステム、二酸化炭素を気泡化する装置、入れ替え用の水を回しておくための60cm水槽、上面式フィルター、大量のピート、大磯砂、ヒーター、夏場の水温上昇を防ぐファン、各種の水質調整剤と液体肥料、水草を剪定するためのハサミやピンセットなどの小道具、pHメーター、などなどである。
そしてつがいのタエニアカラ・カンディディーを1ペア入れて、なんとも豪華な水草水槽が完成した。う〜〜ん、有意義な使い方だ。……なのか??
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