冷麺 2001年02月

2001年02月05日

九死に一生スペシャル

うろ覚えで申し訳ないのだが、確か年間の死者の数では交通事故よりも風呂での溺死の方が多かったと思う。交通事故で亡くなる人が年間1万人を超えると警察が騒ぎ出しニュースにもなる。しかしそうした話題性の大きいニュースの陰で、もっとたくさんの人が風呂で溺死しているのである。

最も危険な時間帯というのがあって、それは早朝だそうだ。朝4時とか5時といった時間に死ぬ人が非常に多い。風呂で溺死などと聞くと俄かに信じがたいが、仕組みを聞くとなるほどと納得する。人間は温度42度以上の湯につかると、体が防御反応を起こし、血圧が一気に上昇する。しかしすぐに湯の温度に慣れ、今度は一気に血圧が下降する。この血圧の変化についていけず、失神してしまうのだそうだ。普通風呂で眠ると、顔が湯に着いた瞬間に反射的に目が醒めるものだが、完全な失神状態ではそのままぶくぶくと湯に顔が沈んでしまい、溺死するのだ。

また酒に酔っている状態だと危険性はさらに高まる。ほとんど自殺するのと変わりない。交通事故に気をつけるよりも、二日酔いでの早朝風呂に気をつけなくてはいけないわけだ。

僕も一度、ヒヤッとしたことがある。別に早朝でも酒に酔っていたわけでもなかったのだが、湯船から出ようとしたときに貧血を起こしてしまったのだ。立ち上がった瞬間目の前が真っ白になり、そのまま真後ろに倒れて後頭部を湯船の角に思い切りぶつけてしまった。気付いたときには僕は浴槽に仰向けで沈んでいた。湯船の底からぼんやりと蛍光灯の光をみつめ、「俺 なにやってんだろう……」と考えた。そこで水中であることに気付き、慌てて息をしようとして、思わずお湯を飲み込んでしまった。時間にしたらどれほどの間、気を失っていたのだろう。10秒か、それとも1分か、今となっては全くわからないが、結構危険な状態だったのかもしれなかった。後頭部にできた随分とでかいタンコブをさすったときに、「ああ、死ななくてよかったぁ……」と思った。

最近、自分が老いたときの事をよく考える。痴呆になって家族に迷惑をかけたくないので、ボケる前に死のうと思うのだが、どうも死ぬ方法がみつからない。そこでこの方法を思い出したというわけだ。酔っ払って早朝に熱い風呂に入るだけというお手軽さに加えて、誰がどう見ても事故にしか思えないので、「自殺」と言うネガティブな捉え方もされずに済むナイスアイデアだと思う。まさにぼんやりと眠るように死ねるだろう。

しかし問題なのは「ボケる前に死のう」と思っていても、いつボケるかは誰にも予測できないということと、いざボケてしまったら自分がボケていることを自覚できないということだ。うーん。なかなかうまくいかないものだ。名案求む。

2001年02月06日

丸の内シャンゼリゼで映画を観よう♪

子供の頃、「同時上映」の意味がわからなくて、「う〜ん これって2つのスクリーンで2本同時に上映すんのかな……。セリフがごちゃごちゃに聞こえてわけわからんじゃん……」と思っていた。そんな馬鹿なことがあるわけないのだが、それ以外に想像がつかなかったのだ。

今日は銀座に映画を見に行ったのだが、「そんな馬鹿な!」ってことが起きた。31年間の人生で初めての経験である。

2本の映画を1日で見てしまおうと思い、まずはチケットショップに足を運んだ。たかが2〜300円の違いだが、チリも積もれば山となる。『BROTHER』と『アヴァロン』の2枚のチケットで3000円だった。正規に見たら3600円だから、結構お得感は漂う。ちなみに知らない人のために補足しておくと、『アヴァロン』というのはアニオタのカリスマ、押井守が監督した、「日本映画なのにポーランドで撮影してポーランド人しか出演してない映画」である。『ターミネーター』のジェームズキャメロンや、『マトリックス』のウォシャウスキー兄弟にも影響を与える真のカリスマ監督である。

『BROTHER』は期待が大きすぎて僕の中ではイマイチだったのだが、北野監督作品ということを抜きにして見ればなかなか面白かった。で、問題は『アヴァロン』上映中に起こった。

上映開始から1時間ほど過ぎたところで、画面がいきなり乱れる。画面の同期が崩れて上下にガタガタ動き始めたのだ。字幕は追えなくなるし、上半分の映像が下に、下半分の映像が上に来てしまっている。「うへえ……映写機の故障かよ!」すぐに何人かの観客が席を立ち、係員に告げに行ったようだ。ほどなくして場内は明るくなり、上映は中止された。

「ええと、ええ大変申し訳ありません。ええ、映写機のええ映写機がそのええとトラブルにより、ええ一時上映を中断させていただきます」

場内アナウンスも相当パニクっている。映画はこれから面白くなるところだったので、このトラブルは観客としては非常に痛い。払い戻しもするとのアナウンスがあり、何人かが席を立ち、帰ったようだ。僕は続きが見たかったので残った。しかし帰りには当然文句のひとつも言ってやるつもりでいる。10分以上もそのままの状態が続き、なかなか上映は再開されなかった。その間にトイレを済ませ、イライラを抑えるためにタバコを一服した。

しかしよく考えてみれば、家でビデオを見るときなどは一時停止をしてトイレに行くなどは日常茶飯事だし、この休憩はかえってありがたいような気がしてきた。タバコが途中で1本喫えたのもよかった。それにめったにない経験が出来て冷麺のネタにも出来る。そんなわけで映画を観終わったときには、映画そのものが面白かったこともあって、僕の怒りはまったくおさまっていたのだった。

映画館を出るときには係員の方から払い戻しを申し出され、お金は返されなかったが鑑賞券を貰えた。2月一杯使える鑑賞券なので、アヴァロンが終わったら次の映画が見れる♪しかも係員の応対はとても低姿勢で好感が持てた。これがもしも横柄だったらまた爆発しているところだ。ってことで今日はよし!♪

2001年02月07日

九死に一生スペシャル 2

総務省が先月発表した2000年の消費者物価指数によれば、品目別の年間価格下落率トップはハンバーガーだそうである。大阪でいうマクド、東京でいうマックこと、マクドナルドの半額セールによる影響だ。このセールによってマクドナルドの客層はガラリと変わり、昼時はほとんどサラリーマン一色となった。事はマックにとどまらず、ハンバーガーチェーン全体からやがて昼食産業全体にまで及んだ。「日本人の昼飯が変わった」とすら言える現象である。ちなみに年間価格上昇率のトップはなんだかご存知だろうか? これは胃腸薬だそうである。ハンバーガーを食いすぎて胃もたれしたサラリーマンが街にあふれてる、といった図式がすぐに浮かぶ出来すぎた調査結果だ。

と、こんな小ネタを新聞で拾いつつ、今日も今日とてネタに詰まっている僕なのだった。

先日風呂で死にかけた話を書いていて思い出したのだが、僕が死に直面したのはこの事故が初めてではなかった。実は僕は物心つく以前の幼少時に、実の父親に殺されかけたことがあるのだ。と、書くと「すわ! 今流行りの(流行るな!!)幼児虐待かっ!?」と思われるかもしれないが、そんな物騒な話ではない。

時をさかのぼること約30年前、まだそこらじゅうに空き地が広がっていた時代の話である。幼稚園にあがる前の僕は、その日家の前の駐車場で、地べたに這いつくばって、砂遊びをしていた。その頃の駐車場というのは舗装などされていなくて、草ぼうぼうのでこぼこな土地、雨が降ると翌日は巨大な水溜りがあちこちにできる単なる空き地の延長線上にあった。

父親の停めている車の後ろに座り込み、ありんこの生態観察に熱中していたときに事件は起きた。家の玄関の前には洗濯物の取り込みを手伝ってくれていた叔母、車の中には朝の荷造りを終えて得意先に向かう父親がいた。

車を発進させるため、バックにギアを入れる父親。丁度車の後輪の後ろに座っていた僕。視界の端に、僕の姿を入れながら洗濯物を取り込んでいた叔母。叔母の「きゃーーーーーーーーーーー!!」と言う悲鳴で父親は心臓がちぢみあがった。勢いよくバックした父親の車に、僕は背中を押されてつぶされかけたのだった。顔が砂利の中に勢いよく突っ込んだせいで顔面は血まみれ、声を出すことも出来ない。叔母の悲鳴がなかったら、そのまま轢き殺されていたかもしれなかった。

慌ててギアを戻し車を降りた父親と、洗濯物を放り出した叔母がかけよってきた。血まみれの僕を見て、また心臓がちぢみあがる。すぐさま救急車を呼ぶと、駐車場の周りは近所の野次馬がわらわらと集まってきて大騒ぎになった。

顔面から盛大に血を流していたので野次馬連中も相当心配したようだが、結局僕の怪我は大したことはなかった。しかし今でも鼻の横と、眉の上にはそのときの傷が残っている。

この話にはひどいオチがついている。救急車に運び込まれる僕を不安げに見つめる父と母の目の前で、大して親戚づきあいのない叔父がとんでもないことを言ったのである。「口からも耳からも出血してたし、ありゃあ助からないな」

勝手に殺すな!!!!

2001年02月11日

監禁!

ここ冷麺ではなるべく時事ネタを避けてきたのだが、あまりにもネタが尽きてきたので、仕方なく手を出すことにした。ワイドショーを賑わす少年犯罪などに言いたいことは山ほどあるのだが、どうしても話が暗くなるので取り上げたくなかったのだ。最近冷麺を放ったらかしにしていたら、てきめんにアクセス数が減ってきた。がんばろう。と言うか、サボリ気味にも関わらず毎日足を運んでくれていた皆さんありがとう。そしてごめんなさい。

先日ハワイ在住の友人が久しぶりに日本に帰ってきたので飲みに行った。結婚相手が米海軍の黒人なのだが、なぜかこの黒人さんが米国籍ではなく、カリブのどこだかの島なんだそうだ。グリーンカードは取得しているらしいのだが、米国籍でもないのに米海軍に所属して、祖国でもないアメリカを守るというのは一体どういう了見なのだろう。ちょっとよくわからない。とにかくそういった関係で、彼女も米国籍を取るのにとても苦労しているのだそうだ。観光ビザでは当然就労出来ないので、金が尽きて日本に逆出稼ぎしに来たというわけである。

新婚夫婦なのに早くも国外別居。しかも相手は年下のモテモテ黒人。ちょっと先行きが不穏な感じだが、それも仕方ないのだそうだ。全く世の中にはありとあらゆる問題が、大きなものから小さなものまで転がっている。

で、話に華が咲いて、気付けば終電間際になっていた。両国の友人の家で飲んでいたのだが、駅から遠いため、車で駅まで行こうという話になった(酒を飲んで運転かよ……という突っ込みは無視させていただく)。しかし人数が多い。運転手の僕を含めて全部で6人。僕の車にはぎゅうぎゅうに乗っても5人が限界だ。そこで名案を思いついた。

「バカボ、おまえ後ろのトランクに乗れ」
「うはっ やだよ! 体痛くなっちゃうよ!」
「バカ野郎! おまえ、トランクに9日間も監禁された女子中学生の身にもなってみろ! たかだか駅までの距離じゃないか。わがまま言ってると簀巻きにして東京湾に沈めるぞ!」
「ぅぅ……」

と言うわけで、座席に5人、トランクにバカボを乗せて駅まで走ってきた。やってみて初めてわかる話なのだが、トランクで喋る声は座席まで簡単に聞こえるのだった。わざと急ブレーキなどをやるとバカボの大喜び(?)する声がとてもよく聞こえる。それと、テールランプの光がうっすらと中に漏れてくるのでトランクの中は真っ暗ではないのだそうだ。結構楽しいかもしれない。

女子中学生助かってよかったね。

2001年02月16日

ドクロも捨てたもんじゃない

シルバーアクセサリーの世界ではとてもポピュラーなモチーフなのだが、クロムハーツにはドクロがない。ハードロックやバイカーの世界でもドクロというのはとてもポピュラーなモチーフだ。自然界では毒をもつ生物が独特の体色を持っていることが多い。ドクロを身につけるということはこれに似ていて、「俺は危険だよ」という無言のサインとなる。

しかしパンクの世界でのドクロは少し意味合いが違う。これは「人間は一皮剥けばみんな同じ。どんなに美しい容姿の人間でも、どんなに醜い容姿の人間でも中身は同じドクロなんだ」という、平和的なメッセージが込められている。これはとても頷けるメッセージだ。と同時にこの境地に達するのはとても難しいということを痛感する。

以前、地下鉄ですごい人を見た。僕の斜め向かいの座席に座っていたのだが、あまりにショッキングだったので、じろじろ見ては失礼だと思いつつも、視線をはずすことが出来なかった。

その人は恐らく想像を絶する大火傷を負ったことがある人なのだった。サングラスをかけているのだが、表情を窺えないのはそのサングラスのせいではない。顔面全体が赤黒いケロイド状になっており、なんと唇がないのである。どういう理由なのか僕には想像もつかなかったのだが、とにかくその人には唇がない。歯と歯茎が剥き出しなのだった。ケロイドの部分は筋肉がそのまま露出しているようになっていて、まるで理科室にある人体の標本みたいな顔をしている。そのため年齢は全くわからない。辛うじて服装から男性だということがわかるだけである。

ときおりよだれが垂れるのを防ぐために、口にハンカチをもっていく。しかしその人はそれを恥ずかしいという素振りも見せず、ゆったりと席に座って毅然と顔をあげていた。僕は言い知れぬ不安感と、気の毒だと思う安っぽい同情と、じろじろ見るのは失礼だという気持ちと、それともうひとつ、どうしても拭い去れない嫌悪感を抱いていた。それは恐らくその人に伝わったことだろう。それが何より失礼なことであり、恥ずべきことだと思い、自己嫌悪に陥った。

その人は多分、毎日そういった好奇の目にさらされ、もう慣れっこになっているのかもしれなかった。電車を降りるときにも、扉を挟んでホームに立っている人たちがギョッとするのを、全く意に介さず堂々と歩いていった。彼が堂々とすればするほど、僕は自分の小ささを恥じ入るしかなかった。

話は変わるが、僕は右の耳が全く聞こえない。片耳だけなので日常生活にはほとんど支障はなく、自分自身、障害を持っているという意識は全くない。初対面などでどうしても会話が聞き取れなかったときなどは、正直に相手に耳が聞こえないことを伝えて、少し大きな声で話してもらうようにしている。しかし片耳が聞こえないことを相手に伝えると、大抵の人がすまなそうな、困ったような表情を浮かべる。それは同情であったり、障害に対する嫌悪であったり、慈愛に満ちたいたわりの気持ちだったりするのだが、僕からすればどれも無用のものだ。僕と君の違いは大したものじゃないよって気持ちなのである。

全く拗ねたところがない、いきいきとした表情の身体障害者の人たちを見ると、健常者の方がドギマギとしてしまい、どう接したらいいのか悩むということはよくある。そんなときに、人間は一皮剥けば同じドクロなんだよと素直に思えればいいなと思う。

2001年02月22日

サロンと勘違いしている老人は即刻去れ

立て続けに身内が2人も入院した。まずは妹の旦那が髄膜炎で倒れ、次いで親父が原因不明(今のところ)の肺病で倒れた。妹の旦那の方は幸い回復に向かい、もう少しで退院できるようだが、親父の方はどんどん病状が悪化しており、このまま仕事の方もリタイアしてしまうのではないかと心配している。というより頭にきている。親父が仕事をリタイアすると、その分のツケが僕に回ってくるからだ。

僕が住んでいる地域だけではないと思うのだが、とにかく病院は恐ろしく混雑しており、入院させてもらうのも大変な状態になっている。親父も2週間自宅から病院に通い、死にそうな症状になったのでやっとのことで入院させてもらえた。それもベッドの空きがないとかで、いきなり集中治療室だ。周りは意識もなく、生命維持装置で辛うじて生きながらえている重病患者ばかり。そんな中で普通に寝起きしている親父がポツンといるのはすごい光景だった。しかしそれにしてもここまで症状が悪化しないとまともに取り合ってもらえない病院というのは一体いかがなものか? 親父も早期に処置していればここまでひどくなることはなかったと思うのだが……。

まずは町医者に行く。瞬時に風邪と診断されて風邪薬が出される。1週間風邪薬を飲むも症状は悪化。少し大きい病院に「呼吸が苦しい」と訴えに行く。待ち時間が3時間の5分診療。「来週詳しい検査をしましょう」ととりあえずの抗生物質が出される。この病院には肺を担当する医者が1週間に1回しか来ない。必然的に週1回の3時間待ち5分診療となる。2回目の診療、レントゲンを見ると「肺に妙な影がある。来週検査入院しましょう」。症状はますます悪化。3回目の診療の数日前、耐え切れなくなり1週間を待たずに病院に行く。容態があまりにも悪いので血中酸素濃度を検査される。医者の顔色が変わり、緊急入院。トイレまで歩くのも禁止される絶対安静となる。しかも結局この病院では話にならないということで、大学病院への転院が決定した。

もうとにかく病院の規模と医者の数が患者の数に見合っていない。病院内はまるで昼時の「行列ができるラーメン屋」のような有様で、看護婦は常にナースコールに追われ、医者は半分暇つぶしの老人の世間話を片付けて本当に危ない患者にたどり着くのに四苦八苦している。あまりの繁忙さに薬品類をきちんと整理することすらままならないようだ。

「こりゃ 医療ミスも起こるわ……」

まったくおちおち病気にもなれない。こういう状況は改善されるのだろうか? 暗澹たる思いだ。

そんなわけで、僕の仕事はいつもの倍になっている。元々の仕事量が少ないのでまだまだ余力はあるのだが、ネットに費やす時間は削られる一方だ。RubberMenの更新頻度もこれからどんどん落ちていくだろう。無念。

2001年02月25日

つまらなかったら金返します

僕のエンターテイメント系本のオールタイムベスト10を書いてみよう。所謂「広義のミステリ」ってやつだ。最近のミステリー業界はSFやら冒険小説やらを取り込んで、エンターテイメント一般を全て内包している感がある。「犯罪が起きて、謎があってトリックがあって、最後に犯人が判明する」という狭義のミステリの範疇には収まりきらない面白本が全てミステリのカテゴリーで分類されているのだ。僕もそれにならってチョイスしてみる。今回は日本に限ってみよう。

『私が殺した少女』原りょう ハヤカワ文庫
どうしてもこれを1位からはずすわけにはいかない。ミステリとして読むと物足りない面もあるのだが、主人公沢崎の生き様がとにかくかっこいい。文章それ自体が読んでいて心地よいと言うか、原りょう節だったらたとえ料理のレシピを書いたものでも読んでみたいと思わせる部分がある。不動の1位。もし読むなら第1作目の「そして夜は蘇る」から読み始めた方がいい。
『猛き箱舟』船戸与一 集英社文庫
熱い! 熱すぎる! 読む人を選ばない面白さという部分ではこれが1位でもおかしくない最高のエンターテイメント本だ。船戸の本はどれも皆面白いが、ほとんどの作品がストーリー的に破綻している中、これは収まりも良くて船戸最高傑作と言えると思う。BoDの前フリブックレビューに載せてある。
『黒い家』貴志祐介 角川ホラー文庫
『青の炎』『天使の囀り』の3作品を全部ベスト10入りさせたいのが、それも面白くないので1人の作家1作品とするとやはり「黒い家」になる。読んでいて寒気がするような恐ろしさがある。今もっとも安心して読める作家No.1かもしれない。天才だ。
『二重螺旋の悪魔』梅原克文 角川ホラー文庫
『ソリトンの悪魔』の方が完成度という点では圧倒的に上なのだが、こちらの方が荒々しい力強さに満ち溢れていて僕の好みである。ちなみにこれはもろSFなのでミステリだと思って読むとびっくりする。ハリウッドで映画化して欲しいNo.1(梅原自身もそれを強く希望している)
『魍魎の匣』京極夏彦 講談社ノベルス
一種のブームみたいになってるので説明不要かもしれないが、キャラ小説として読んでも面白いし、アカデミックな教養本として読んでも相当面白い。これは京極の2作目で、僕の中ではこれが最高傑作。但し1作目から順を追って読んでいかないとわけわからないので注意が必要だ。この人が文壇に現われてから、ペダンチズムしか取りえの無いやたら長いだけの小説が溢れかえった。そう言った意味では罪は大きい。
『ダックコール』稲見一良 ハヤカワ文庫
何も解説したくない。これを読んで何も感じられない人とは友達になりたくない。素晴らしいの一言。
『ターン』北村薫 新潮文庫
暖かい人物描写にホっとさせられるのだが、人間はそればかりではないということをさりげなく突きつけてくる作家。登場人物がいい人ばかりで、和んで読んでいると冷や水をぶっかけられる。「日常ミステリ」というカテゴリを生んだ人でもあるが、この作品はSF。他の著作も全て面白いので、出来れば全部ベスト10入りさせたいくらいだ。
『ガダラの豚』中島らも 集英社文庫
中島らもは小難しいことを小難しく書かない作家で大好きだ。エッセーが結構売れているみたいだが、僕は長編小説の方がいいと思う。「永遠も半ばを過ぎて」もそのぶっとび具合に驚いた。読者の期待を見事に裏切る天才。BoDの前フリブックレビューに載せてある。
『ブルース』花村萬月 角川文庫
暴力を描かせたらこの人。たけし映画が好きな人なら必ずハマるだろう。この人の作品はどれも殺伐としているのだが、せつなさとユーモアが不思議と漂っている。中でもこのブルースは強烈な印象を残す1作だ。
『ダレカガナカニイル』井上夢人 新潮文庫
合作ユニット「岡嶋二人」を解消した井上夢人が書いた傑作。こういう力技をすんなりと読ませるのが作家の腕の見せ所だ。僕は涙もろいのでこういうのを読むとしばらく力が出なくなる。感情移入しまくり。

なんか見事なくらい謎解きと無縁の作品ばかり集まってしまった。僕はホントはミステリが嫌いなのかもしれない。

2001年02月27日

王様の耳はロボの耳

パターン認識という言葉がある。PCの音声認識や文字認識なんかでも使われる言葉だ。例えば「あ」という文字を書くとする。これは人によって上の横棒が長かったり、したの丸い部分が大きかったりするだろう。PCのような厳格な世界では、なかなかこれを同じ「あ」という文字だと認識するのが難しい。そこで横棒の長さや下の丸い部分の大きさが違っていても「あ」という文字だと認識させる技術が必要になってくる。これがパターン認識だ。

ところで人間はこのパターン認識を何の苦もなく自然にやってのけている。その最たるものが顔の記憶だ。よくよく考えてみれば人間の顔というものはみんな同じ要素によって出来上がっている。2つの目と2つの耳、真ん中に鼻、下のほうに口だ。しかし僕らはそれぞれの顔をしっかりと記憶することが出来る。しかも帽子をかぶろうが、髪型を変えようが、眼鏡をかけようが、どんな変化が起ころうとも、その顔がその人のものだと即座に判別することが出来る。これは実は結構すごいことだ。もしも人間のパターン認識がPC並に貧弱だったら、このようなちょっとした変化で別人と勘違いしてしまうことになる。

前々回に僕は右耳が全く聞こえないのだと書いた。そのため普通の人よりも会話に苦労することが多い。特に困るのは初対面の人でボソボソ話す人だ。こういう人が相手だと、何を言っているのか全くわからないということもしばしばである。ボソボソ話す人でも、ごく親しくて何度も会話を交わしたことがある人ならば、少し楽になる。それはパターン認識を総動員して、聞こえなかった部分を補うことが出来るからだ。「あ」という文字を半分隠されても僕らはそれが「あ」という文字だと推測することが出来る。それと似たようなことが声を聞くときにも通用するのである。

だから何度も話して、その人独特の話し方のクセや音の調子をパターンとして記憶すると、半分聞こえなくても大体何を言っているのかわかるようになる。もちろん音声だけではなく、前後の文脈から話の流れを推測するということもある。実は僕はほとんどの場合、こうやって推測しながら会話をしているのである。当然のことながら推測が大ハズレを起こしていて、全くちぐはぐな会話になることも多い。

A「コーヒーと紅茶どっちがいい?」
僕「何それ?」
A「いやどっち飲む」
僕「うん」
A「いや、うんじゃなくてどっちよ……」
僕「へ?」

テレビ朝日系の「タモリ倶楽部」という番組の人気コーナーに「空耳アワー」というものがあるが、僕は恐らく日本でも有数のソラミミストなのである。



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