
7月1日からいよいよJASRACによる「個人運営の着メロサイト潰し」が始まる。実に腹立たしいのだが、こちらはあくまでも著作権を侵害している立場なので大きな態度を取れないのが歯がゆいところだ。こそこそ逃げ回るのが精一杯である。
よくご存知ない方のために若干説明しておく。JASRACというのは「社団法人日本音楽著作権協会」という組織の略称である。音楽というものはいつ、どこで、どのように自分の著作物が利用されるか把握しづらいので、権利者はこの組織に著作物の管理を委託するのが通例である。委託を受けたJASRACはありとあらゆる場所で権利者の利益が損なわれないように監視の目を光らせることになっている。
「なっている」と書いたのは、実際は権利者の利益よりもJASRAC自体の利益が優先されているように疑問をもたれている部分があることと、権利者の利益が明らかに損なわれていない場合にまで(むしろ権利者の利益に結びついている場合にまで)JASRACがしゃしゃり出てきて、莫大な金を手に入れようとしている(ように思われる)からである。
僕は著作権法に明るくないし、今回のJASRAC問題についてもそれほど明るくないので、一般市民の素朴な疑問(というか着メロサイトを作っている者の悲痛な叫び)という形で、これらについて述べようと思う。
今回JASRACがやろうとしていることは、簡単に言うとインターネット上での音楽配信に「課金」という規制の網をかけるということだ。デジタルな音楽データは際限なく複製が可能であり、野放しにすれば権利者の利益に大打撃を与えかねない。NapstarでのMP3共有に規制がかけられたのと、ほぼ同じベクトルの動きである。しかし決定的に違うところは、あろうことか個人サイトのMIDI使用などという瑣末なケースにまで莫大な使用料を課そうとしていることである。これは世界でも例を見ない暴挙だと巷では評判だ。
HPを開くといきなり音楽が流れてくるサイトがある。人によっては「強制MIDI」と言って忌み嫌ったりするものだが(ちなみに僕も大嫌いだ)、このようにサイト上でBGMとして流す音楽にまで使用料を課すことが決定している。HPで音楽を流したい者はJASRACの認可を受け、BGMを差し替える場合はその報告をし、年間で1万円程度(場合によっては数万円)のお金を支払う必要がある。
その手続きの煩雑さにもうんざりなのだが、問題はそんなことではない。問題を一言で言えば、「権利者はそのような事を本当に望んでいるのか?」ということだ。現在までのインターネットの歴史や、広く世界の事例を見ると、このような小じんまりとした、ほとんど「個人の私的使用のための複製(著作権法第30条)」に近いものは黙認されてきた。私的使用のための複製とは、簡単に言うと自分で買ったCDをMDに録音して家で楽しむというようなことである。
もちろん世界中の人が閲覧し、データを容易に複製できるインターネット上でこのような事をするのは「私的使用のための複製」にはならず、いざ法を整備するとなれば、ザル法にならないように厳密に規定する必要はある。しかしいずれにしても著作権を保有する権利者が、2次使用、3次使用を認めれば、法的には何も問題はない。
仮に僕がある音楽の作曲者で、その楽曲の著作権を保有しているとしよう。CDが発売されており、その収入が結構な額だとする。このCDを丸ごとMP3化されて、ネット上で勝手に配布されたらそれは大打撃だ。著作権を主張して、配布している人物を告発するかもしれない。勝手にではなく「MP3化して配布してもいいですか?」と許諾を求められても絶対に応じないだろう。当たり前だ。
では HPのBGMとして1曲をMIDI化して流している個人サイトがあったとしたら僕はどうするだろうか? これは場合によっては黙認するかもしれない。CDをMP3化するのは容易で且つほぼ完全な複製だが、MIDI化するには楽譜から起こす手間があり、困難で不完全な複製だからだ。僕のCDを買おうとしている人はこのようなMIDIデータでは満足しないであろうから、CDの売上にはほとんど影響がない。むしろCDの宣伝になって利益につながるかもしれない。但しこのMIDIが僕の作曲した曲を台無しにするようなひどい出来であれば、頭に来て使用停止を申し出るかもしれない。または金が欲しくて欲しくてたまらなければ、MIDIを使用している人物に「それなりのお金を払ってくれれば使用を許可しますよ」と言うかもしれない。僕が心が狭い人間であれば「どれだけお金を積まれようとも、いかなる理由があろうとも僕以外の人間が僕の音楽を使用することは許さない」と言うかもしれない。
要するに著作権を主張して使用を許可するか否かは権利者の裁量によるということだ。権利者をさしおいて司法が勝手に裁くことは出来ない。
本来権利者と使用者の間にはこのような1対1のやりとりがあるべきなのだが、WEBという海のように広い場ではそんなことは事実上無理である。そこでJASRACの出番というわけだ。JASRACは大勢の権利者の著作物を一手に引き受ける
「ヒッヒッヒ。あんたの曲が無断で使用されないようにあたしが代りに見張ってあげるよ。そして、MP3だろうがMIDIだろうが着メロだろうが、どんな場所でどんな方法で使用されようとも、ぜ〜んぶいっしょくたに課金してあんたに利益をもたらしてあげるよ」
「但し! あたしもその何割かは手数料としていただくよ? ん? 手数料が高い? ばか言いなさんな。あたしが管理してあげなかったらあんたには1円たりとも入ってこないんだ。ちょっとでも収入が増えるんだから文句言うんじゃないよ。あんただって金が欲しいんだろ? 例え小学生が作ったHPのBGMに使われてもそこから金をむしり取りたいんだろ? ヒッヒッヒ」
「ん? そんなところにまで課金はしたくないって? ……おだまり!! いい子ぶるんじゃないよ!! あたしの言うとおりにしてりゃいいんだよ! 世の中金なんだよ! むしれるところからはむしるんだよ! あたしゃね、数え切れないくらい大勢の客をかかえてるんだよ。いちいち客のわがままに付き合ってたら体がいくつあったって足りやしないよ! めんどくさいから全部課金。文句があるんだったらやめりゃいいよ。あたしのバックには文化庁がついてんだ。あんたなんかひとひねりさ」
なぜか魔法使いのババアだ。
つづく
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