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2002年01月13日

ひと夏の経験

毎年夏になると狂ったように海に行っていた。毎回日帰りでひと夏に15回くらい行っていた。これは良く考えると凄いことで、7月8月に週1回で行ったとしても計8回。週2回でやっと16回。毎回天気に恵まれるわけではないので行かない週ももちろん出てくる。毎日朝10時から夜12時までバイトしていて、海に出発するのはバイトが終わった深夜2時とか3時である。そのまま寝ずに海に行き、夕方まで遊んで、帰ってくるのは夜10時過ぎ。そして泥のように眠ると次の日はまた朝10時からバイト(起きるのは8時だ)。中1日というのはどう考えても不可能で、最低でも中2日空けていないと行けない。この過密スケジュールで15回行くと夏の2ヶ月間、1日たりとも体が休まる日がないという状態になる。ま、それくらい好きだったのだ。おかげで肌はほとんど黒人級に黒くなっていた。

バイト先は御茶ノ水にあったのでこの周辺で待ち合わせることが多かった。深夜に出発するので24時間営業のファミレスやファストフードである。その日僕はいつもより早い時間に待ち合わせ場所に着いてしまった。まだ誰も来ていない。キョロキョロと周りを見渡す僕はちょっと挙動不審者を思わせたろう。ウド鈴木みたいなファンキーなカリアゲと目深にかぶった野球帽、ジーンズ。真っ黄色のTシャツからはカラスみたいな黒々とした腕と顔がにょっきり生えている。深夜なので、まるでTシャツと帽子だけが宙に浮かんでいるかのように見えた。

んー、俺が一番乗りか。仕方ない。ロッテリアでちょっと待ってるか。お! 新製品じゃん。カルピスシェイク。いいねえ。いいねえ。夏はやっぱりカルピスだよね。牛のしょんべんと発音が一緒だから日本でしか売れないんだってね。cow piss.

「カルピスシェイクひとつ」
「は?」
「ヵルピすシェィクひとっ…………」
「は?」

いい年ぶっこいたでけえ男が、カルピスシェイクなんていう子供っぽい飲み物を注文することに恥じらいを感じていた。そのため無意識に声が小さくなっていた。もごもご言うもんだから聞き取れないんだろう。店員はしつこく聞き返してくる。ますます恥ずかしくなって声が小さくなる。店員も困っている。僕はしまいにムカムカしてきて押し黙ってしまった。店員がハッ! と何かに気付いたような顔をした。

What's ?
「外人じゃねえよ!」



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