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2002年04月04日

医者になれません

痙攣をおこしたり、突然泡を吹いてぶっ倒れた人間を間近に見たことはありますかね? アレ、すごく恐いと思うんですけど。何か人間が人間じゃなくなってしまったような、言いようのない恐怖感が湧きませんか? ものすごくズレてるかもしれませんが、なんか死者が生き返ったような驚愕と言うか、人間の皮をかぶった別の生物に遭遇したような戦慄と言うか、人間が壊れゆくさまを見せつけられるような恐怖と言うか。「やばい! 助けなきゃ!」と思うより前に足がすくんで何も出来なくなります。医者失格。

先日友人を成田まで見送りに行って思い出しました。だいぶ昔、この成田空港でそういうシチュエーションに出会ったんです。

外国帰りの友人を出迎えようと、僕は到着ゲートの前で今か今かと待っていました。周りには同じように背伸びしたり、首をせわしなく左右に振ってゲートの向こうを注視している人たちが一杯います。僕の少し前には頭が禿げ上がったおじさんが立っていました。突然おじさんの体がガクガクと揺れ始めます。「なんだろう……この人、妙だな……」と思ったのも束の間、突然おじさんは一切の防御姿勢を取ることなく前に向かってぶっ倒れたのです。膝を曲げることもなく、両手を床に着くこともなく顔から落ちました。あまりにも突然の事で、僕は硬直したまま息をすることすら忘れていたと思います。

うつぶせにぶっ倒れているおじさんの顔の周りにジワーっと血溜まりが出来てきました。衝撃で鼻が潰れしてまったんだと思いました。その直後に信じられない速度でおじさんの体が痙攣を始めました。ガクガクガクガクガクガクガクガクガクガク。頭の片隅で「助けなきゃ!」と思いながらも僕の体は全く動きません。恐怖で凍り付いてるのです。そのうち目の前が真っ白になって僕自身が貧血で倒れてしまいました。ぶっ倒れはしませんでしたが、立っていられなくなって柱にもたれて座り込んでしまったのです。

何人かの気丈な人たちが慌てておじさんの所に駆け寄り、気道を確保したり血を拭ったりしていました。それを朦朧としながら見ていた僕。情けない……。おじさんの周りに僕しかいなかったとしたら、おじさんの命はどうなっていたか知れたもんじゃありません。

毎日のようにこういう状況に向き合っている医者は本当にすごいな……と思った事件でした。僕の近くで倒れないように気をつけてください。助けられませんから。



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