
10:00起床。すこぶる調子がよろしい。日本での僕ならほぼ確実に二日酔いになっている量の酒を飲んだはずなのだが。多分韓国の食い物のおかげだと思う。恐ろしく絶好調。
12:30鐘路3街(ジョンノサンガ)駅でチェ・ボエちゃんと待ち合わせをする。ボエちゃんは19歳、梨花(イファ)女子大の学生だ。日本で暮らした経験は全くないのに日本語が堪能と聞いている。なんでも日本語スピーチコンテストで優勝した際の賞品が「日本への旅行」で、それが唯一の来日経験だそうだ。いくら堪能と言っても、所詮は片言程度だろうと高をくくっていたら本当に日本語べらべらでびっくりした。「ってゆーか、そっちじゃないじゃん?」とか普通に使う。おまえ本当に日本で暮らしたことないんかい!? もちろん敬語も完璧で、僕らに対しては敬語、純さんに対してはタメ語と使い分けるのだ。すごっ! 天才っ!
13:00ここらへんから地名やら地理感覚が相当怪しくなってくるので、観光の参考にしようと思っているならやめた方がいい。僕の記憶が確かなら、まずは仁寺洞(インサドン)で飯を食ったはずだ。観光客ではとても入る事が出来なさそうな、いかにも地元民しか利用しなさそうな古びた家庭料理の店である。残念ながら名前はわからない。ビクビクしながらボエちゃんの後についていっただけだから……。涼しい顔で料理を注文する純さんが恨めしい。昨日のサンギョプサルも美味かったが、ここの家庭料理の美味さはそれを遥かに凌駕している。なんて美味さだ……。例によって2〜3品しか注文していないのに、山のような付け合わせの料理が出てきて腹一杯になった。食ったのはメインがチヂミ(韓国お好み焼き)、それにチゲ(鍋っていうかスープ)が3つ。ご飯をよそう鉄製のお椀がとても可愛くて「これは絶対お土産で買おう」と思った。お店では予めこの鉄製のお椀にご飯を入れ、たくさん保温器に入れておくのである。ご飯を食うときはお椀を手で持たない。日本風にお椀を持ち上げて食うのはお行儀が悪いとされている。あと面白かったのは不思議な緑色の爪楊枝。残飯を豚が食ったりしても内臓が傷ついて死なないように「でんぷん」で出来ている。飲み込んでしまっても溶けるという寸法だ。
食事の後は南山コル韓屋村(ナムサンコル ハノクマウル)という所に徒歩で行ったはずだ。多分。あるいはコリアンハウスのどっちかにいったはずだ。どっちかわかんない。韓国の伝統的な建築物(約600年前のもの)が当時のままに保存されている。うーん、これぞ観光。昨日は見られなかった韓国っぽさを堪能した。欧米人が浅草で日本を感じるのと同じ心境なんだろうと思う。だだっ広い広場ではたまに結婚式の記念撮影が行われており、それを発見したら「チュッカ ハムニダ!(おめでとう!)」と声をかけるのがお約束らしいのだが、あいにくの雪模様でそれは見られなかった。代わりにボエちゃんの笑顔を撮影。
名前もよくわからない通り(韓国の伝統的な建物を模した店が密集してる)を歩いているとき、「そうそう、なんで韓国人って自分の国のこと韓国って言わないの? みんなウリナラ(私たちの国)って言うよね」などと話していたら、ナイスタイミングですごい名前の店を発見した。その名も『ウリナラ マンセー(我が国万歳)』 笑。さすがのボエちゃんもこれには苦笑していた。韓国人が見てもこっぱずかしい名前らしい。
18:00西大門(ソデムン)で『NANTA』というノンバーバルパフォーマンスを見る。韓国伝統音楽のサムノリのリズムを取り入れた打楽器オンリーのライブで、せりふなしでもストーリー展開がわかるように工夫されており、大人から子供、外国人まで楽しめる。とても面白かったが客いじりがかなり頻繁に行われるので、指名されてステージに引っ張り出されやしないかと冷や冷やした。冷や冷やしないでワクワクしろよ自分、という感じだが。
20:30ボエちゃんが通う梨花女子大学校のすぐそば、新村(シンチョン)は学生がたむろする飲み屋街だ。土間と土壁、茣蓙がすごい雰囲気を醸し出している『東学』という名の飲み屋に連れて行ってもらった。メニューはもちろん全部ハングル。日本語が通じるような半端な店ではなく、かなりコアな学生飲み屋だ。うれすぃ。ここで日本の嘘情報をボエちゃんに吹き込みまくった。いくら日本語が堪能とはいえ、たった1回の旅行でしか日本に来た事がないボエちゃんには、どれが本当でどれが嘘なのかはわからない。「日本では美味しい料理を食べたら、おいすぃぃいいいい!!! と絶叫しないと失礼」「目上の人に対してはまず、つーかどこ中? と聞くのが正式」
ボエちゃんの日本通ぶりもすさまじく、僕らよりもよっぽど日本のドラマをよく見ている(もちろん吹き替えなし)。『ロンバケ』『ラブジェネ』『ヒーロー』『踊る大捜査線』くらいは当たり前。小説も『冷静と情熱の間』など、翻訳版ではなく原文で読み込んでいる。全くすごい子だ。こんなすごい子が、純さんと出会うまで日本人の友達が一人もいなかったと言うのだからもったいないったらありゃしない。今すぐ日本で就職できるよ。いや本当。
24:30相方がべろべろに酔っ払ってしまったので、路上に放置して帰宅。いやー今日は、と言うか今日も飲んだ飲んだ。次から次へと酒を注文する僕らに、店員が目を丸くしていたのは気のせいではない。ヨギヨー! トンドンジュジュセヨ!(すいませーん!トンドン酒ちょうだい!)「うわ、またかよあの日本人ども!」みたいなね。ああ、二日酔いになりませんように……。
今日覚えた言葉。「ボエ ヌン キガ クゴ ナルシナグニョ」ボエさんは背が高くてスレンダーですねえ。「チャッカマンニョー」ちょっと待っててね。「クーモリ チョアヨ」その髪、いいね。「オットケー」どうしよう。「クェンチャナヨー クェンチャナヨー」いいよいいよ〜。「コンベ!」乾杯!
つづく。
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