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2003年01月16日

交通事故起こしました

車で事故りましてん。滅多に無い事だからなんかの参考になればいいすね。死ぬほど長いけど我慢して読みんさい。

まず詳しい状況。片側1車線の対面通行。中央線あり。道幅は広くなく狭くなく見通し良し。ちょっとしたバス通り。僕の車はハザードを出して路駐中。そこから一旦道路真ん中あたりまで頭を右に振って、バックで側道に入るつもりだった。サイドミラーで右後方を見ると車がやってくる。「うん、この車をやりすごしたら中央線あたりまで右旋回しよう」と思った。本来ならば顔を右後ろに向けて目視しなくてはいけないんだが、サイドミラーで済ましてしまった。車が僕の横を通り過ぎた。よし発進! ゴリッ! ええ!? サイドミラーでの確認では車は1台だったはず。しかし死角にもう1台連なっていたのだった。30メートルほど先で相手の車が止まる。ボルボ。当たった感じはギリギリかすった程度だと思ったが、こういう場合はほんのちょっとの接触でも車体の傷は深かったりする。天を仰いで相手の車に歩み寄った。

相手は40代の紳士。奥さんと子供2人が同乗している(子供ははしゃいでる)。左後部の車輪とフェンダーに目立つ傷が出来ていた。勿論僕の車の右前部も相手の車の塗料で黒く焦げたようになっている。僕は開口一番謝った。「すいません……」紳士はこう言った。「警察呼びますか?」僕に異存はない。すぐさま携帯で110番。警察が来る間、僕の車検証と免許証を相手に手渡す。紳士「このまま修理工場直行しますけど、どうしますか? 保険でやりますか?」僕「はい」。15分ほどで警察到着。怪我人もないし、車も自走出来ないような大事故ではない。さっさと事情聴取を終わらせ、あっという間に警官は去った。この時点での警察の判断は、僕の不注意による事故、といった感じだった。勿論僕自身の判断もそれに相違ない。ただ、もしもボルボが路上駐車している僕の車との側方距離を十分取っていたなら、ギリギリこの事故はなかったかもしれないな、とは思った。

紳士は激昂するでもなく、かといって和やかな顔をするでもなく、「じゃあ、後は修理工場から貴方の方に連絡が行くと思いますから。よろしく」と事務的に言い捨ててその場を去った。僕のこの時点での憂慮は保険の免責額だった。5万は最低でも自腹になるとそろばんをはじく。しまった。相手の連絡先や名前すら聞いてないや。ま、いっか。後で警察に聞こう……。

休日明けの2日後、警察に連絡して相手の名前と住所、電話番号、車のナンバーを聞く。ご近所さんだ。その後保険会社の方に連絡。ここで思わぬ事になった。保険の担当者の弁。「ええと、アニさんは事故当日、Aさん(仮名)とのお話し合いで、修理費用の全額負担を申し出ましたか?」「え? いえ、全額負担とは言ってませんが、保険で支払うとは言いました」「そうですか。ちょっと言いにくいのですが、今回の事故は先方にも若干の過失ありとみなされまして、保険額はこちらの方からは満額出ないと思われます。つまり今後の詳しい調査の結果、仮にアニさんの過失割合が8、先方が2とすると、保険の支払いは修理代の8割までしか出ないという事です。先方とのお約束で、全額負担を申し出たのでしたら、残りの2割はアニさんの自己負担ということになります……」

おいおいおいおいおいおい。ちょっと話が違うぞ。天に誓って僕は全額負担などという言葉は言ってない。確かに過失の割合はほとんど僕にありと思ったから、その場で謝罪はしたよ。保険で支払うとも言ったよ。でも保険会社の方で仮に2:8の過失割合と見たなら、僕に全額負担の義務はないでしょうよ。「ちょっと待ってください。僕と先方では認識が違ってます。僕は全額負担の約束はしていません。過失割合に応じた額しか支払えませんよ。というか、こういう折衝は保険会社の仕事じゃないんですか?」「いえ、こういった事例の場合、事故当時の口約束にまでは私どもとしては口を挟めません。残念ながら先方様はアニさんの全額負担を前提としていらっしゃいます。そこらへんは当事者同士で話し合ってください」がーーーーん。事故起こしただけでもブルーなのに、さらに「事故の被害者」とも言える、あの紳士に対して「すいません、お金ないからまけてください」とかお願いしなきゃいけないの? 向こうはもう僕が全額負担の約束をしたと思い込んでるんでしょ? 無理だよー。勘弁してよー。ああ……。

紳士は開業医だった。わざと診療中の時間を見計らって、病院ではなく自宅の方に電話した。奥さんが電話に出る。まずは探りだ。「すいません。先日事故でご迷惑をおかけしたアニです。お手数ですが、ボルボを出した修理工場の電話番号を教えてください」「は、はい」聞いた直後、即座に工場の方へ電話する。「あ、Aさんの車はもうそちらにありますか? ざっとでいいんですが、修理の見積もりを教えてください。ええ、ざっとでいいです」「30から40ってところですかね?」ぎゃっ!!!!! 僕の勝手な予想ではせいぜい20以下だと思ってたのに……。外車の板金ってなんでこんなに高いんだよ! 仮に過失割合2:8だとすると最大8万、免責額の5万と合わせて13万円だ。きつっ! きつい! これはちょっと引き下がれないぞ。また奥さんに電話する。

「ええ〜、大変申し上げにくいのですが、今回の事故は保険会社によるとAさんの方にも過失があると判断される見通しです。もちろん事故を起こしたのは僕の方ですから、保険の支払いに関してはやぶさかではありませんし、僕の車の修理代をそちらに請求しようなどとは全然考えていません。しかしAさんは僕が全額負担を約束したとおっしゃっているそうですがこれは事実と違っていますよね? 申し訳ありませんが僕は保険支払額以上の金額は出せないかもしれません」「はあ? ちょっと待ってください。私どもの方では過失割合は0:10だと認識しております。こういう事は当事者間ではなく、保険会社を通した話し合いが筋かと思いますけど」「はい、おっしゃるとおりなんですが、これは保険会社から言われた事なんです。僕とAさんの間で決めてくれと」「確認します。それは○○火災が言った事なんですね?」「はい」「わかりました。主人と相談します」

よしよし。やっと光明が見えてきた。1時間後、保険会社から電話が入る。「あ、アニさんですか。度々すいません。今Aさんからご連絡がありまして、やはりAさんはアニさんの全額負担を強硬に主張されております。そこで、今一度事故当時の詳しい状況を教えていただきたいのですが」「はい」「まず、アニさんは発車前にウィンカーを点滅させましたか?」「はい、間違いなく点滅させました。しかしそれがAさんに見えていたかどうか……」「なぜ見えなかったと思われるんですか?」「はい、Aさんの車の前には事故と無関係な車が走っていました。その影になっていたと思うからです」「なるほど。ではアニさんがAさんの車に気付いたのは正確にはいつですか?」「ぶつかった直後です。僕は後方確認が不十分だったので、車が2台いたことに気付いていませんでした。Aさんの車は全く見えていませんでした」「そうですか…。では仮にアニさんがAさんの車に乗っていたとして、この事故は防げたと思われますか?」「いえ、無理だったと思います。多分Aさんの車からは僕の車がほとんど見えていなかったし、僕の車が発進したことすらわからなかったと思います」「そうですか……。……。んーーーーー。……。わかりました。今回の事故はアニさんに全責任があるという方向でお話をすすめさせていただきます。つまり過失割合は0:10です。そうなると、アニさんの車両の修理は先方の保険が一切使えませんがそれはよろしいですか?」「はい異存ありません。元々僕が悪いんですから、先方に負担してもらおうとは全く思っていませんでした。では、すいませんがAさんにこの旨伝えていただけますか。」「了解いたしました」

ふーーーーー。セーフ。では今回の教訓をいくつかまとめておこう。まず第一に「保険の過失割合が0:10になることはまずない。全額負担などの口約束はご法度だ」という事。いくら自分が悪いと思っていても保険会社がそう判断するとは限らない。謝罪は人として必要だが、口をすべらすと大変なことになる。第二に「中途半端な過失割合にならないためにも、無意味な自己弁護はするな」。ちゃんとウィンカー出してたのに! とか 側方距離が不十分だったから相手も悪い! などと主張していたら自分の首を絞める結果になっていたはずだ。第三に「事故証明はしっかりやってもらえ」。警察の聴取がいい加減だと過失割合に直接響く。今回は車が2台連なっていたという事実を警察が書き漏らしたために大事になった。最後に「自分では埒があかないなら先方にねじこんでもらえ」。Aさんの怒りを誘発して、保険会社にクレームをつけてもらう格好になったのが救いだった。担当員によると、Aさんは「俺は絶対悪くない。なぜ俺に過失があるんだ!」と厳しい口調で詰め寄ったそうだ。これが僕に対する再調査につながった。ここまでくれば後は僕の話術次第になるというわけだ。

さらにもうひとつ。これは立派な犯罪だが、世間でまかり通っている手口がある。修理工場に根回しして、見積もり金額を免責額の分だけ上乗せしてもらうのだ。それで保険がおりたなら、後は修理工場から免責額をバックしてもらう。これでチャラ。保険金詐欺だ。え、僕? もちろんそんな事するわけないでしょ。やだなあ、もう。



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