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2003年02月06日

ポール・バーホーベン 「惨殺バカ」

note:1938年生まれ。オランダ人。代表作『ロボコップ』『トータルリコール』『氷の微笑』『インビジブル』

前回のクローネンバーグと微妙にラインがかぶってるんですが、「バカの中身」はかなり違います。クローネンバーグが陰にこもった「ひきこもり系バカ」(くどいようですがこれは褒め言葉です!)だとすると、バーホーベンは能天気で開放的な「カリフォルニア系バカ」とでも言うべきキャラクターです。二人ともまともな映画をまともに撮る能力がある人でありながら、自分の趣味を暴発させずにいられない、という部分で共通しています。この趣味の暴発こそがまさしくバカなのです。

実質的なハリウッドデビュー作と言える『ロボコップ』('87)は商業的にも大成功をおさめた名作ですが、これは脚本の勝利と言えるでしょう。この映画はバーホーベン的バカ視点で読み解くと、かなり違った一面を見せてくれます。恐らく彼が最も描きたかったシーンは次の2つです。ひとつは「主人公の腕が銃で撃たれて吹き飛ぶシーン」、もうひとつは「変なもみあげの悪役が産業廃棄物の劇薬を浴びて、皮膚がズルズルにただれるシーン」です。つまり彼は映画でおおっぴらに、目を背けたくなるような惨殺をやってみたいと思ってる人なんですね。それもとびっきり明るく爽やかに。ここがバカ。典型的な勧善懲悪の物語なのでさすがに主人公はひどい事はやりませんが、悪役連中の残虐ぶりは当時としてはかなり衝撃的だったのを覚えています。一言で言えば悪趣味なバイオレンス映画。しかしこれこそがバーホーベンの趣味そのものなのです。勧善懲悪の物語をもってしても、彼の臭いを消し去る事は出来ないのでした。

僕が大好きなバカ映画の中でも、群を抜いてバカ度が高いのが『スターシップトゥルーパーズ』('97)です。SF『夏への扉』で有名なロバート・A・ハインラインが書いた名作『宇宙の戦士』が原作です。原作は「軍国主義を美化している」などの理由で一部左翼系の思想家からバッシングを受けた事でも有名ないわくつきの作品なのですが、バーホーベンはこれを見事なまでに滅茶苦茶なバカ映画に仕立て上げました(しかもこの偉大な原作を未読のまま映画化したんです! 冒涜!)。思想のかけらもありません。単に人間と虫が戦って、どかどか死んでいくだけの映画なのです。人間の尊厳、死への畏怖、そういった高尚なものは微塵も存在せず、ただひたすらに「人が、虫に、殺される」のです。そのあまりの非道ぶりには、逆に聖も俗もない純然たる荒ぶる神の存在すら感じることができるでしょう。バーホーベンは原作の「人間と虫が戦う」という設定だけを見て、小躍りしたに違いありません。「おおー、これはおおっぴらにがっつんがっつん殺せるな!」と。鬼畜という言葉がこれほど似合う監督もいません。

一般的には『氷の微笑』が有名なんでしょうが、これはバーホーベンが普通のエロ映画(?)も撮れる下衆野郎(褒め言葉です!)なんだ、ということをあらわしているに過ぎません。

結論:バーホーベンは実も蓋もない人間の死に様を描かせたら世界一のバカ。「人間の内面」を描き、あわよくばアカデミー賞をもらっちゃおうなどと考えているそれこそ下衆なハリウッドの一流監督たちに、ビルの屋上から「人間は単なる肉の塊なんだよ」と唾を垂らして喜んでるイカレ野郎なのでした。ビバ、バカ!




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