
「ええと、どれにしようかしらね。お兄さん、一番甘くないものはどれかしら? あんまり甘くないものがよろしいんですけれど」
もうね、このセリフ、1000回は確実に聞きましたね。恐らく飲食店、とりわけ喫茶店でアルバイトしたことある人なら誰もが聞いたことがあるはずです。ティータイムにケーキを食おうっていうおばはんのセリフなんですが、二言目には「甘くないやつ」。おまえらそんなに甘いのがイヤなら縁側で昆布茶すすって梅干でも食ってろちゅう話ですわ。甘くないケーキなんかないんじゃヴォケ。と思いつつもそこは客商売ですから、ぐっと堪えて比較的甘くないものを提案してみたりするわけです。「はい、こちらのサバランなどは甘さをひかえておりますが」
「ん〜? サバ? サバラン? あーじゃあこれでいいわ。苺ショート。苺ショートケーキくださる? それとあたしはレモンテーを」
はい、提案無視。2秒でスルー。つーかおまえ苺ショート、めちゃめちゃ甘いやんか。おまえは本当に甘くないケーキが食いたいのかと。「甘くないケーキくださる?」とか言いたいだけちゃうんかと。私はちょっとケーキにはうるさいのよ? 甘さひかえめの大人な味じゃないと満足しませんことよ? とかポーズだけは取ってかっこつけてみたものの、全っ然1ミリたりともケーキなんか詳しくなくて、サバランとか言われてもピンとこなくて、鯖の味噌煮とか連想しちゃって、結局苺ショートみたいなド定番に落ち着いちゃうっていう……。しかもおまえ一人やんか? なんだよ「あたしはレモンテーを」って。あたしはあたしはって。「はい、あなたはレモンテーですね。じゃあお連れ様は……って誰もおらんやんけ!!」とかノリ突っ込み期待系? あー、ごめん。突っ込むとこはそっちじゃなくてレモンテーの方だった? ふぅ……。せーの、「テーじゃなくてティーだろうが! おまえはレモン亭一門の噺家か。低迷する落語界の救世主か」もう、つっこみ疲れて僕、黄昏ちゃう。んで、最後にこれだ。
「ごめんなさい。お兄さん爪楊枝ある?」
ケーキ食っておまえ何が歯に詰まるんだよ! わけわかんねーよ。帰れ!
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