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2003年04月12日

ドキュメント ある男の大学生活

4月。嵐のようなサークル勧誘を受けて、あら、俺ってば嘱望されてる人材なのかしら、などと勘違いを起こし、適当に新歓コンパを冷やかしてどこに入るかも決めず、そうこうしているうちにどこのサークルでも新入生の輪ががっちり出来上がっていることに気付き、今更サークルってわけでもねーだろなんて斜に構えて自ら大学サークル人脈からドロップアウトし、語学クラスの比較的顔をよくあわせる連中くらいは仲良くしておかないと後々テストの時に大変だな、なんて利己的且つ人間関係というものを舐めくさった態度で友人と接し、当たり前のようにそれを見透かされて、寄ってくる者はと言えば同じように人生舐めきってダレた連中ばかり。そろそろ学校にも慣れてきたなと思った瞬間ゴールデンウィークに突入。何をするでもなく家でダラダラ過ごしていたら、なんとなく学校行くのがかったるくなってゴールデンウィーク明けに早くも自主休講。大丈夫大丈夫、7割出席すればOKなんだろ? 俺は終盤にエンジンかかるタイプなのよ。もうこれ以上休んだらやばいって状況に追い込まれて初めて実力を発揮できる男なのよ、なんつって自分を納得させてまた今日も自主休講。明日も自主休講。明後日も自主休講。誰が呼んだかゴールデンイヤー。

6月。あー雨かったりー。やってらんねー。とか言ってられない状況に陥ってることに気付いて慌てて登校。試験の情報仕入れなきゃいけないんだが、情報がっちり握ってる真面目軍団につてはなし。仕方なく例のダレきった連中に助けを求めてみるも状況はやつらも同じで、あてもなく学内をさまよい歩くうちに誰ともなく「しけた面しててもしょうがないから雀荘でも行くか」なんて言い出す始末。雀荘に行ってみるとあらあら随分繁盛してんじゃないの。試験前なのにおまえら大丈夫なのかよ、などと他人の心配してる場合じゃない事にも気付かず、むしろお仲間がたくさんいることにズブズブ安心しきって試験の前日まで麻雀漬け。さーいよいよ試験だ。最後の最後に回ってきた真面目軍団のノートをコピーしてささっと字面だけ眺めていざ本番。わからない。何を問われているのかすらわからない。コピーした資料の利用の仕方すらわかっていなかった事を思い知らされあえなく撃沈。白紙回答も芸がないから仕方ねえ、ここはキムチチャーハンのレシピでも書いて出しておくか。翌日の試験も同じ状況になるのは目に見えてるから受けるだけ無駄無駄。受ける意味ないじゃん。じゃ放棄だ放棄。なんつって朝の9時から新装開店のパチンコ屋。試験当日パチンコ屋。おーおまえも来てたか、なんて言ってる場合じゃない。

7月。8月。9月。なげーなー。大学の夏休みってなんでこんなになげーんだよ。こんなに休んじゃったらもう学校なんて行く気ゼロだよ。毎日毎日ゲームゲーム麻雀麻雀映画映画飲み会飲み会。で、ハッと気付いたら学祭だと。あーいいねー。まめにサークルで頑張ってた連中がここぞとばかりに張り切っちゃうアレか。一回くらいは体験しておくのもアリかもな。せっかくだから行っとくか。華やかな連中をぐるっと見回すとどいつもこいつも女連れで喜色満面じゃないか。でもなんだ、コレ。面白くねえ。びたいち面白くねえよ。 わかったよ。完全にわかった。学祭ってのは参加してるやつだけが楽しくて、客の方は全然つまらないんだな。って俺はなんだ? 客か? 客なのか? この大学に在学してる学生じゃなくて、一般客なのか? 子供がどんな生活を送ってるか覗きに来た地方在住のご両親なのか?

そろそろ後期試験って時期になったらなんだか学内がキナ臭い。おいおい待ってくれよ。神はやっぱり俺を見捨ててなかったのか? なんだ試験のストライキって。笑わせやがる。俺は向学心に燃えて大学に来てんだぞ? この世の知という知を片っ端からこの頭脳に収めるために大学来てんだよ。一応形はな。それがなんだ。自治会とかいうわけのわからん学生組織が俺様に断りもなく勝手に後期の試験を潰しやがったよ。ハッ! ストライキ万歳! 全部レポートに振り替えだとよ。などと喜び勇んで雀荘に駆け込んでみると、同じように勝利に酔いしてる連中が大挙して押し寄せている。さー今日は朝まで打つぞ。レポートなんて楽勝楽勝。1日あれば即書ける。

結局出したレポートは2つ。うち1つは出席日数が足りず不可。1つはなんとびっくりの優をもらって気を良くしたが、成績表に踊る不可と否の文字のなんと神々しいことか。不可否不可否不可否不可否不可不可否否不可否否。アレか? フカヒレスープとか言って笑ってごまかすべきか? なんと1年次の成績、取得単位数4。逆さに振っても血も出ない。1コマだ。たった1科目のみの単位を取得し、俺様の大学1年は終わった。学費と、麻雀で負けた金と、パチンコで負けた金と、競馬で負けた金と、数え切れない駐禁の反則金を支払い、それら全部を足しても追いつかない貴重な時間を無駄にして得たかけがえのない4単位。この時点で4年での卒業が完全に不可能となり、翌年も1年生の授業を全て受けなおす事が決定している。ははは。大学って面白いところだな。休んで遊んでても先生から電話かかって来ないんだって。あはははははは当たり前かー。まあアレだ。5年で卒業すりゃいいんだろ? 来年はフル単位取るからよ。見てろよこの薄ら馬鹿共。などと悪態ついたこともすっかり忘れ、気付けば次の年も全く同じ事をしでかしている自分がいる。大学2年次、取得単位数ゼロ。1科目も単位を取ることなく大学2年が終わった。さすがにもう取り返しがつかないという事に気付き始めている。俺は一体どこで道を間違えてしまったんだ……。

そして俺はズルズルと何か得体の知れない汚水のようなものに流され、大学6年の春に退学届という名の一枚の紙切れを事務的に受理され、学生という高貴な身分を剥奪され、プー太郎というさらに崇高な称号を得た。以来、この季節になると決まって大学を卒業する夢を見る。糞忌々しい夢の中で俺は、後悔という言葉の意味を知った。



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