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2003年09月14日

映画感想係『28日後...』

『シャロウグレイブ』で華々しいデビューを飾り、『トレインスポッティング』で不動の地位を手に入れたかに見えたダニー・ボイル監督の名声は、その後ディカプリオ主演の『ザ・ビーチ』で地に落ちた……。

正直『28日後...』はあんまり期待していなかったのだけど、こりゃ驚きましたよ。まず僕がこの映画を「絶対観よう!」と心に決めたきっかけは、TVCMで流れた荒涼たるロンドンの街並みと、そこを彷徨う病院服の男、この2つのビジュアルだけでした。ぞくぞくしました。病院で目覚める。外に出るが人っ子一人いない。原因は? この世界は一体どうなってしまったんだ? もうコレ! コレしかない! っていう決定版の設定です。ジョージ・A・ロメロ監督が『ゾンビ』で描き、テリー・ギリアム監督が『12モンキーズ』で描いた黙示録です。しかし決定版だけに下手をすれば最低の駄作になってしまうという諸刃の剣。ダニー・ボイル監督はこれをどう描くんだろう? それがたとえ駄作であったとしても、僕にはそれを見届ける必要がある。こう思ったのでした。

で、結果から言うとこれがいい感じ。細かい事を言えばキリがないですけど、全体としてOK。90点以上はつけたいです。以下ネタバレ注意


続き

ロメロの『ゾンビ』と『死霊のえじき』をどれほど意識して作ったのかがとても気になりました。特に無人のショッピングセンターで食糧を手に入れるシーンでは「これは『ゾンビ』へのオマージュ」なんだろうか。というかリメイク?」という考えがちらついて映画に集中できないほどでした。全編に渡って設定が酷似しています。ちょっとした映画好きなら誰でも知ってると思いますが、ロメロのゾンビ映画は3部作になっていて、『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド(Night Of The Living Dead)』、『ゾンビ(Dawn Of The Dead)』『死霊のえじき(Day Of The Dead)』と繰り返し同じ設定で黙示録後の世界を描いてるんですね(邦題ではわからないけど英題だと死者の夜、夜明け、日(昼)になっている)。もうぶっちゃけ設定丸借りして、『ゾンビ』の第4作として(Dusk of The Deadとかで)撮ったほうが良かったんじゃないかと思うくらいです。でもそれをしないで「ゾンビ」を「感染者」としたのはどういう意図があったのだろうと思うわけですよ。

考えられるのは「少しでも現実にありそうな話にしたかった」、「感染者が死滅した後の世界も描きたかった(ゾンビだと不死なのでこれは出来ない)」、「殺人という罪をより重く主人公に背負わせたかった」あたりなんですけど、パンフレットに載っている脚本家アレックス・ガーランド(『ザ・ビーチ』の原作者でもある)の言葉を読んでちょっとしたショックを受けました。何も考えていなかったようなのです。

『28日後...』はオリジナル脚本の作品で、原作は特にない。ただ、いろいろな作品に影響を受け、引用もしているので「オリジナル」という言葉を使うのは、私としてはどこか抵抗がある。

登場人物たちがスーパーマーケットの食料を略奪することでその食欲を満たそうとする場面に『ゾンビ』を重ねる人もいるだろう。それに、鎖に繋がれたメイラーという感染者は『死霊のえじき』のバブにも通じる設定だ。こうした引用は実は無意識のうちに行われたものだ。つまり脚本を書いた後に、他の作品から切り取られたり借りたりしたことに私自身も気付いたのだ。

脚本家自身も認めてしまっているように、これはオリジナル作品というよりはゾンビトリロジーの現代的無意識的リメイクと考えてしまっていいようです。アレックス・ガーランドは1970年生まれ。好きな漫画は『AKIRA』。僕と1歳違いのこの脚本家は僕と同じようにゾンビトリロジーに衝撃を受けた世代に間違いありません。黙示録後の世界を描くに当たって、自分の中で熟成されたゾンビトリロジーが「凶暴性を増すウィルス」と形を変えて湧き上がってきたのだと思います。。もちろん他にもたくさん別の作品からの引用が見られるんですが、それらに関してはアレックス・ガーランドは意識的におこなったと言っています。


本当はこんな観方ではなく、ゾンビトリロジーでも繰り返し追求されていた「(モンスターよりも正気の)人間の凶暴性残虐性が一番怖い」というテーマ(?)を真正面から受け止めるのがいいと思うんですけど。

それともうひとつ。僕を虜にした「無人のロンドン」というイメージは、SF小説の古典『トリフィド時代』(ジョン・ウィンダム 創元SF文庫)からの引用だそうです。未読。これは読まねば。

28日後...〈特別編〉

28日後...〈特別編〉

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • 発売日: 2004/08/02
  • メディア: DVD



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