■ 映画感想係 『スチームボーイ』
予告編って大抵面白そうに見えるじゃないですか? どんなクソ映画でも。でも『スチームボーイ』の予告編は全然面白そうに見えなかったんですよね。そんな嫌な予感を払拭してくれるのを期待して観に行きました。『AKIRA』から実に16年となる大友作品。期待せずにはいられないわけですよ。
以下ネタバレを大量に含みます。これから観ようと思っている人は読まぬが吉。
続き
大友克洋監督自身が何かのインタビューで答えていたんですけど、『AKIRA』の後に映画を作るにあたって、「舞台を19世紀のイギリスにしたい」という監督の希望は多くの人に失望をもって迎えられたそうです。誰もが『AKIRA』のような世界観をもった新作を望んでいたにも関わらず、大友監督はあえて自分の信念を貫きました。それが吉と出たとは僕には思えませんでした。面白くない。僕には全然面白く感じられませんでした。以下、いつものように箇条書き感想です。
- スチームパンクを真正面から捉えすぎ。スチームパンクそのものに触れたことがない人にとっては魅力的な世界に見えるかもしれませんが、はっきり言ってもう食傷気味です。あえてこの世界観で物語を描こううとした意図が全然わからない。「スチームパンクの歴史に新たな1ページを刻んだ」と言えるような目新しさは何もありませんでした。
- 秀逸なアクションがスチームパンクのせいで台無し。大友監督の真骨頂は「巨大建造物を独創的に破壊するシーン」にあると思うのですが(今回もスチーム城対蒸気機関車の鎖での綱引きシーンは出色の出来でした)、せっかくの斬新な破壊シーンもスチームパンクという手垢にまみれた世界観のせいで既視感が漂ってしまってると思いました。同じ独創的な破壊なら、見た事のない世界でやってほしかったと思います。
- テーマが陳腐すぎ。『天空の城ラピュタ』然り、『AKIRA』然り、もうこのテーマは飽き飽きです。「人類の手に余る強大な力を手に入れようとした狂信者が、力を制御できずに破滅する」というテーマ。これを普遍的なテーマとして描き続けたいのなら、誰も見たことがない世界を提示する必要があると思いました。少なくともスチームパンクの世界で(9年の歳月と24億もの制作費をかけて)描くべきテーマじゃない。
- SF的な前提がおざなりすぎ。スチームボールは神秘とは無縁の科学そのものなのだから、物語世界の整合性を保つ理屈が欲しかったです。「なんか珍しい液体をすごい高圧にしたらスチームボールっていうすごいものが出来ました」という子供みたいな理屈しかありません。
- 主人公の父親エディが暴走した理由がわからなさすぎ。説得力がありません。
- 声優陣のレベルの差がひどい。特に主人公の祖父ロイド役の中村嘉葎雄さんがひどかった。滑舌が悪すぎて何を言ってるのかわからないし、アニメのオーバーな表情と、中途半端にテンションの低い声のトーンが全く合致してません。顔は明らかに大声で怒ってる表情なのに、声量は足りないし本気で怒ってる声にもなってませんでした。主人公レイ役の鈴木杏さん、スカーレット役の小西真奈美さん、デイビッド役の沢村一樹さん、サイモン役の斉藤暁さんが非常に良かっただけに、ますますロイド役の中村さんのひどさが目立ちました。アルフレッド(フレディ)役の寺島進さんも声優向きじゃなかったです。張りがなさすぎて周りから浮いていた。
同じ日に『ディープブルー』という海洋ドキュメンタリー映画を観たんですが、映像の凄さだけで映画というものは成り立つ、ということを教えてくれたのは『スチームボーイ』ではなく『ディープブルー』の方でした。残念。60点。
スチームボーイ 通常版
- 出版社/メーカー: バンダイビジュアル
- 発売日: 2005/04/14
- メディア: DVD