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2005年04月25日

ウルトラマンのカード

小学校低学年の時に、ウルトラマンのカードを集める遊びが流行った。大きな紙製のアルバムのようなものが一緒に発売されていて、これに糊でカードを貼り付けていく。カードはどうしてもダブるので、なかなかアルバムは完成しない。あと残り数枚というところまでいったのだけど、もう友達との交換でどうにかなるレベルの話ではなくなっていた。買えども買えども欲しいカードは手に入らない。小遣いも尽きる。俺はどうしてもアルバムを完成させたかった。

うちの親父の同業者にワタナベさんという人がいて、週に一度はうちの事務所に出入りしていた。親父とタメなので、当時33歳とかそれくらいだったと思う。今の俺よりも年下だ。ひょんなことからワタナベさんの奥さんが、このカードを袋詰めする内職をしていることがわかった。「おう、ダイスケ。俺にまかせとけ。足りないカード持ってきてやるから」。俺は飛び上がって喜んだ。飛び上がって喜んでる俺を見て、ワタナベのおじちゃんも喜んでいた。

大人は平気で子供との約束を反故にしたり、後回しにしたりするものだ。俺も甥っ子が出来て、そういうダメな大人になっていることに気付かされる。そして大人の事情を汲めない子供は深く傷つく。でもワタナベのおじちゃんは約束を守った。後回しにもしなかった。俺が渡したメモ通りのカードを、忙しい仕事の合間をぬって、すぐに持ってきてくれたのだった。

ついにアルバムが完成した。足掛け半年近くもかけてカードを集めていったのと、毎日バカみたいに広げては眺めていたので、既にアルバムはボロボロになっていたけれど。この時の嬉しさをどう表現したらいいのかよくわからない。子供時代だけに味わうことが出来る性質のものだ。

今でもそのアルバムは実家に大切に保管してある。実を言うと、表紙に貼り付けてあった1枚だけ、カードが剥がれてなくなってしまっているのだけど(表紙に貼り付けるような作りにしてあるのがおかしい)。貼り付けたカードの上から、さらに透明なテープでも貼って補強しておけばよかったと少し後悔したが、確かにこのアルバムは完成したのだという記憶が俺の中にはちゃんとある。喪失感は意外なほど小さい。

たまに実家に帰ったときにアルバムを見ると、不思議な充実感とともにワタナベのおじちゃんの顔が頭に浮かぶ。

久々にワタナベさんと電話で話す機会があったのだけど、声がまるっきり変わってしまっていて驚いた。最初誰だかわからなかった。先々週受けた、食道がんの手術の影響だそうだ。「リンパ節に転移しているので、来月からは抗がん剤の投与が始まる。それまでは家族との時間を大切にしなさい、家に帰りなさいと医者に言われて退院してきた。入院中、いろいろと仕事手伝ってくれてありがとうな」。

お礼が言いたいのは俺の方です、と思ったのだけど、多分もうワタナベさんはウルトラマンのカードのことなんて忘れているだろう。何しろ二十数年前の話だ。



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